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「伝える」「伝わる」の間にある人間の器

ビジネスシーンにおいて、伝えたいことが相手にうまく伝わらない場面はよくあります。「どうして伝わらないんだろう。伝え方が悪いのかな……」と悩む社員に、いつも僕が伝えていることは、「伝える」と「伝わる」の間にある、人間の器についてのお話。これは、僕たちが大切にしている行動規範の一つでもあります。

世の中に自分と全く同じ知識、経験を持つ人はいません。その多様性を前提として、伝える側、受け手側の双方で歩み寄ることが、ミスコミュニケーションを減らす第一歩です。自分が持っている知が不完全であることを認めると、成長の伸びしろは果てしなく広がるのです。

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己の器を空にして、やわらかく大きな器をもつ

僕が打ち合わせや勉強会の最初に、必ず伝えていることがある。

みなさん。自分の器を空(から)にしましょう。自分が全知全能ではなく、知らないことのほうが多いと思うのであれば、今まで自分が培ってきたもの、得てきた情報は一度捨てて、空にしましょう」

人の器の中には、たくさんのエゴや、知識、経験が詰まっている。その状態では、新しい情報が入ってこない。「自分が知っていることと違う」「思っていたことと違う」と、新しい情報を異物とみなし拒絶してしまう。そうするうちに器はどんどん固くなり、「あの人は頭が固い人ね」と、周囲から距離を置かれ、新たな発見が得られないまま成長が止まってしまう。

情報を水で例えると分かりやすいかもしれない。器の中に古い水が残っていたら、新しい水を注ぐと混ざって濁ってしまう。きれいに空にしてから水を注げば、新しい水がそのまま器に注がれる。器を柔らかく大きく成長させるほど、たくさんの水を貯めることができる。それは、自分の知の世界が広げることと同意だ。

あなたは、器を大きくする努力をしているだろうか。その努力が「学ぶ」という姿勢だ。これは、伝える側と受け取る側の双方に必要な前提条件だ。

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伝える側は、水が注がれる器を作るよう「教える」

もし、水を注ぐ下に器がなかったら、どんなに良い水も地面へ流れてしまう。水を注ぐ前に、器が用意されていなければ意味がない。では、どうしたら相手に器を用意してもらえるのか。それは、水を流す前に「教える」こと。これにより、器作りを手伝うことになる。

まずはお互いに「器を空にする」ことだ。自分自身の器も「これくらいは知っていて当然」といった思い込みや固定概念を捨てる。その上で、相手の器に足りないもの、必要な情報を相手から引き出し、教えていく。こういったひと手間で、ミスコミュニケーションが少し減るのではないだろうか。

冒頭でお伝えした、「自分の器を空にしましょう」のメッセージは、水を流し入れる準備の合図でもあるのだ。受け手側の準備が整い、器が蛇口の下にセットされていれば、あとは蛇口をひねっていっぱいに注ぎ入れることができる。

お互いに柔らかい状態の器を持つと、円滑なコミュニケーションができる

感情的になってしまったときは特に注意が必要だ。伝えたいことだけ相手に投げても伝わらない。「今、言っておかないと気がすまない」と、感情の投げ合いになるのはできるだけ避けたいものだ。なぜなら、そこに成長はないから。器が硬く、空きがない状態でどんなやり取りをしても、水はこぼれ落ちてしまうだろう。相手の意見を否定したり、批判したり、受け入れないことは、ミスコミュニケーションの始まりだ。

伝え手と受け手の双方が、器を柔らかく大きく成長させる姿勢は、個人、会社に双方にとって大切だ。円滑なコミュニケーションと、一人ひとりの成長が事業を大きく成長させる。

P.G.C.D.のマネジメントチームは、社内でも特に、器の柔らかさと大きさが求められる職種だ。事業を成長させ、より多くのお客様にP.G.C.D.をお届けするためには、社内外の幅広い情報を吸収して、柔軟にコミュニケーションを取りながら成長しなければいけない。多面的な視点が必要なマネジメントにおいて、柔らかく大きく成長する器は、どんな企業でも求められるのではないだろうか。

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伝えることに悩んだときは、器を空にして考える

伝えたのに伝わっていないと感じるときは、立ち止まって考えてみてほしい。相手の器の準備は整っていただろうか。自分の固定概念を相手に押しつけていなかっただろうか。相手の器に水が注がれたかどうかは、相手にしかわからない。伝わるには自ら歩み寄らなければ変わらない。

伝えることだけに集中せず、相手が受け止められるよう、器の準備をするコミュニケーションは大切な準備だ。これは受け手の立場になったときも同じく、器を空にして、お互いがやわらかく大きな器を作る関係性を作ることも重要だ。これらは2者間だけの問題ではなく、会社側の環境づくりも重要になると思う。

僕はこれからも、この話を社内外で続けていくつもりだ。一人ひとりの器は、社員全員の成長を育み、会社の器を大きく成長させることだろう。


聞き手:栃尾江美
構成協力:ふじねまゆこ

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