会議の生産性を高めるツールと考え方【P.G.C.D.のミーティングWay】
前回は、ミーティングに対する僕たちの考え方と背景をお話しました。「会議=コスト」の考え方と、P.G.C.D.の経営哲学「3つの愛」との関係は、僕たちの行動規範を理解するためにとても重要です。(記事はこちら:会議の生産性を高める準備と心構え:P.G.C.DのミーティングWay )
この背景を理解しながら企業活動をするうちに、さまざまなツールやプロセスが生み出され、改良を重ねてきました。
今回は、実際に業務で使うツールや、課題に対する考え方をご紹介したいと思います。
メンバーの認識を揃える「現状・イシュー・課題」ボードと色合わせ
会議で話が噛みあわないときに、僕はよく「色合わせ」をする。例えば、僕がイメージする青と、あなたの青は同じか。確認すると、相手が僕の思う青ではなく緑をイメージしていることに気づくことがある。以前、このnoteで説明した「伝える」「伝わる」の話 と同じく、あらかじめ相手との色合わせをしていないと、認識がずれたままで話し続けることになり、時間を無駄にしてしまう。
言葉の意味と同様、人によって捉え方が違うのが問題解決のプロセスだ。まず、人によって、「課題」と呼ぶ対象が異なっている。例えば、風呂の底に穴が開いていていつまでたっても水が溜まらない。そんな時に、「課題」を「穴が開いていること」ととらえる人がいれば、「水が溜まらないこと」や、「水が漏れていること」ととらえる人もいる。認識がバラバラのままに議論を進めても、解決には向かわないだろう。
目の前にある問題へすぐに飛びつくのではなく、「現状分析」「イシュー(問い)」の認識をメンバーで揃え、洗い出した「課題」から取り掛かる優先順位を見極めるべきだ。パッと課題に飛びついても、結果的にそれは遠回りになってしまうことが多い。
風呂の底から水が漏れていることは「現状」。底の穴は「課題」だ。穴が1つだけなら、その穴を塞げば水は漏れない。しかし、穴が1つとは限らない。なぜ水が漏れているのか? というイシュー(問い)を立てたときに、いろいろな穴(課題)が見えてくる。
その際、直径1cmの穴と、半径5cmの穴があるなら、先に塞ぐべきは後者だろう。穴を埋めることを目的にしてしまうと、小さな穴に飛びついてしまいがちだ。課題から飛びつかないために、現状・イシュー・課題を整理し、ロジックを組み立てることは、本当に適切な課題をメンバー全員が見極めるために重要なプロセスだ。
僕たちが認識を揃えるために使っているツールが、「現状・イシュー・課題」と書かれたボードだ。これは、P.G.C.D.のミーティングデスクに常備してある。その場で、「現状・イシュー・課題」を書き込み、共有してからミーティングをスタートする。メンバーの認識がずれないよう、目に見える形にすることができる。
検証しない課題は思い込みであり、課題ではない
課題を見極めるとき、注意しなければいけないことがある。思い込みによる課題設定をしないことだ。思い込みをしないためには、検証が不可欠だ。その際に僕たちが気を付けているのは、「定性を補う定量分析をする」ということ。
ビジネスの世界では、定量データを元に定性分析をすることが多い。例えば、商品のリピート率30パーセントという現状があったら、「インタビューしてリピートしない理由を探ろう」といった具合だ。P.G.C.D.はそうではなく、「まずお客様の話を聞きましょう。そのお話が100人に1人の声か、100人に30人の声か知るために定量分析しましょう」と伝えている。なぜなら、定量から入ると、そこにお客様の姿が見えないからだ。
リアルな店舗があれば、ベテラン店員がお客様の様子からいろいろなことに気づく。年齢、性別、服装、お探しの商品ジャンルなど、お客様ごとに違う。その中で、40代の素敵な女性が入店されたけれど、何も購入されず帰られた。なぜ? という視点がとても重要だ。だが、数字だけではそういった繊細な要素に気づかず、重要な課題を見過ごしてしまう。
無店舗販売という僕たちのようなビジネスにおいて、数字は強い思い込みを作る。本来は、結果の1つひとつにお客様の姿があるが、数字だけではそれが見えないのだ。
定量分析をするには、仮説を立てることが必要だ。仮説の精度を上げるために、僕は「N=3で仮説を立てましょう」と伝えている。3人のお客様の話を元に仮説をたてれば、ある程度の精度が保証される。その上で、その仮説が正しいか、定量的に検証するのだ。
P.G.C.D.の社内には、お客様をお迎えするために、Innovation Village “ICHIE”という一室がある。立礼式の茶室を参考に、僕がデザインしたスペースだ。そこに、洗顔するための設備を一通り揃え、エステや、イベントなどに活用している。
お客様にICHIEへお越しいただき、普段どおりの泡を作っていただくと、その泡は十人十色だ。P.G.C.D.の石鹸は泡立て方が特殊で、僕たちが考える良い泡を作るにはコツがいる。「良い泡とはこういうものです」と、僕たちが見せてお伝えしない限り、本来の効果を実感していただけないだろう。逆に、お客様の商品に対する使用感は、直接お伺いしない限り知ることができない。
思い込みを捨て、目の前で起きたこと、いただいた意見を客観的に考える。先に伝えた例のように、リピート率が増えない理由を見つけるには、お客様からいただいたご意見をヒントに課題設定を行い、仮説を立て、定量データで検証するのが、僕らの行動規範に基づいたやり方だ。
目線を揃えることと時間への意識が、会議の成果を最大にする
ここまで、「現状・イシュー・課題」を見失わないためのツールと考え方をお話しした。僕たちのミーティングWayには、他にもミーティング前にアジェンダ、タイムテーブルを共有することや、会議の議事録共有も含まれている。全ては時間あたりの成果を最大にするための仕組みだ。
前回、お伝えした時間への意識とともに、さまざまなツール、プロセスをもって、僕たちはミーティングの成果を最大化させている。限りある時間を活かせるかどうかは、メンバー1人ひとりの意識と目線合わせ次第だ。
聞き手:栃尾江美
構成協力:ふじねまゆこ