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Next-generation Leader and How an Organization should be.

グロービス経営大学院において常務理事を務める田久保 善彦氏と、JBIGの野田 泰平が、「サスティナブルな経営と次世代のリーダー、組織の在り方」をテーマに語り合った。


2.プロフィールtakubo

田久保 善彦氏

グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長
学校法人グロービス経営大学院 常務理事
株式会社P.G.C.D. JAPAN社外取締役

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。学士(工学)、修士(工学)、博士(学術)。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て、グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画、運営、研究などをおこなう傍らグロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発、思考科目の教鞭を執る。経済同友会幹事、経済同友会・規制制度改革委員会副委員長(2019年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問等も務める。

「学習する組織」の構築に必要なこととは?

経営者の学びが不可欠

野田泰平(以下、野田) 田久保さんとの出会いは、2010年。今年でちょうど10年。私がグロービス経営大学院で学ぶ時の初めのクラス担任が田久保さんだったんですけど、その時からのご縁ですね。

田久保善彦(以下、田久保) 本科生として2年間コミットされて、私が務めるクラスをたくさん受講してくださいましたよね(笑)

野田 同じ先生から学ぶ方が、学びのテーマを深く追求できる気がしたので、田久保さんが持っていらっしゃるクラスを選んでいました。そして、卒業するときに顧問になっていただきたいと直談判し、その流れで社外取締役になっていただきたいとお願いしました。卒業しても学び続けなければならない、このまま学びを終わらせてはいけないと思ったんですよね。

田久保 野田さんって不思議な魅力があると思うんです。例えば、病的にプロダクトを愛しているとか、病的にお客様のことを愛しているとか。たくさんの起業家から見ても結構エッジが効いていて、だから面白いから人が集まるんでしょうね。

野田 おそらくグロービス卒業生では一、二位を争うくらいグロービス卒業生を社員に採用していると思いますし、グロービスの関係者の方たちと一緒にビジネスを行なっていると思います。そういう意味では、グロービスのテーマである人、物、知恵のネットワークを最も有効活用して経営している卒業生かもしれませんね(笑)。

田久保 ビジネスを行う上で大事なことって3つか4つしかないんですよね。何をやりたいかっていう「コンセプト」と、それを行うための「スキル」、一緒に行なってくれる「仲間集め」とベースとしての「時間」。

野田 そうですね。グロービスからも、田久保さんからもたくさん学ばせていただいています。今日は対談を始める前に、前提として「仕事と学び」の関係性について共有させてください。田久保さんは『Wring(ダブルリング)』ってご存知ですか?

田久保 あまり聞いたことがないですね。

野田 Wringとは、人の思考パターンを表す方法の一つで、話をするときに、互いに何を前提としているのかを知っておくためのものなんです。例えばAとBという2つの物事について、どんなバランスで考えているのかを2つの輪を用いて図に示していくのです。

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参考文献:https://www.doubring-j.com/

田久保 なるほど。人はどうしても自分のバイアスで話を進めますから、前提が共有できてないと噛み合わないですからね。

野田 そうなんです。仮にAを「学び」、Bを「仕事」とした場合、田久保さんはどんな図になりますか?

田久保 私の場合はA(学び)の輪の中にB(仕事)の輪の中にあって、マインドセットはAとBが1つの輪の中にあるといった感じでしょうか。

野田 私もAの中にBがあるパターンで、学びの中に仕事があることになります。私にとって仕事と学びは切り離せるものではないし、学びを習慣化しなければならないとさえ思っている。つまり、私はこうした前提を持っているので、メンバーにも「学びは重要だよ」と言っているんです。「何のために?」という声も聞くけど、学ぶのはすべて自分のため。にもかかわらず、「会社で教えてくれない」「〇〇を教えてもらいたい」とか、待ちの姿勢でいるのは危ういと思うんです。

田久保 おっしゃる通り。シックスポケットなんて言ったりしますけど、特に近年の若者は少子化の影響もあり、上げ膳据え膳で育てられ、会社に入っても手取り足取りで教えてもらえることが多い。彼らを育てる中間管理職は、全員「ハラスメント」と言われるのを怖れて何も言わないケースが多く、何から何までやってあげちゃう。世の中、甘やかす方向にしか進んでないのかなと感じることもあります。

野田 学ぶ意欲は、本人のマインドセットにかかっているからといって、会社が突き放していいとは思いません。先日、社内でドラッカー研修を行ったとき、皆が「面白かった!」と言っていました。もし、学ぶことにシャッターを下ろしていた人がいたとしても、知ることで自分の器が大きくなっていくように、まずは、組織として学ぶ楽しさを経験させることが大事だと思っています。

田久保 グロービス顧問の田坂広志さん(現・多摩大学大学院 名誉教授)は、「Learning Organization、つまり学習する組織を創るのは簡単」とおっしゃっていて、なるほどと思いました。やはり、組織はピラミッドで成り立っているので、経営陣や役員が必死に学べばいい。トップが学んでいると、部長も学び、その姿を見た課長も焦って学び始める。小さい組織でも、トップが学んでいれば人はついてくる。逆に言うと、学ばない経営者の組織は遅かれ早かれ終焉を迎えます。

野田 だからこそ、私は、経営者は一生学び続けなければならないと思っています。会社は経営者以上にも以下にもならない、学びを止めた経営者は衰退しかない。そんな企業は生き残れない。経営者は学び続ける責任があります。学ぶ意欲がなくなれば、その役割から降りるべきです。

田久保 ただ、Learning Organizationを構築する上では、気を付けなければならないことがあります。JBIGで言うと、「野田さんは社長だし特別だから、僕らが学んで何になるのか」と思う人もいるかもしれない。つまり、経営陣と2、3番手以降の社員が分断される可能性があるのです。だからこそ、研修として学びの場を組織に導入するのは有効ですよね。最初は強制されることで反発心を抱く人もいるかもしれないけど、取り組んでいるうちに学ぶ良さが分かってくる。学びへの意欲を高めるきっかけは、会社がつくったほうがいいと思っています。

多数のリーダーを輩出するために、経営者ができることとは?

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得手不得手を認識して生かせる土壌づくりが重要

野田 学びの他にも組織においては、メンバーそれぞれに自分の得意不得意を自覚してもらい、強みを伸ばし、生かせるようにすることが重要だと思っています。私自身も自分の凹んでいる部分は認識していて、そこは組織や仕組みで埋めるように取り組んでいます。

田久保 おっしゃる通りで、役割分担が重要です。例えば野田さんはビジョンを語り、事業を創るのが得意ですから、そこを研ぎ澄ませればいい。その分、苦手とするオペレーションはそれが得意な人に任せれば、組織として補完できますよね。経営において重要になるのは、まさに「Will」と「Skill」と「Network」なんです。野田さんはビジョンを立てるためのスキルを鍛え、不足している部分はネットワークで引っ張ってくるのが理想的ですよね。

野田 今回、ホールディングス化したのもリーダーをたくさん増やしたいから。私がずっと一人だけのリーダーであり続けるのは違うと思うし、海外展開など他の事業を進めているときは、物理的にもそちらに集中せざるを得ない。やっぱり皆がリーダーとして引っ張っていってくれないと。でも「リーダーになれ」と言うと、「いやいや、私は」って言う人が少なくない。だから最近は「出番を増やそうよ」って言い換えています。「責任を持ってほしい」「役割だからね」と言うと、プレッシャーを感じさせてしまうけど、「自分の出番だ」と思えると自分事化して取り組んでくれると感じています。

田久保 「リーダー」とはただのポジションの名前だけど、「リーダーシップ」はすべての人が発揮すべきスキル。 私が一番端的にリーダーシップの観察ができるのは、実は幼稚園の砂場だと思っています。その日、その瞬間に、大きい山を作りたいと思った子がそこでリーダーシップを発揮する。「水持ってきて」とか「ここに穴掘って」とか他の子に指示を出す。でも、ポジションもないし、翌日は別の子がリーダーシップを発揮するかもしれない。まさにその日その瞬間の出番が彼、彼女だったということ。『日替わりリーダーシップ』が活きるような組織になれたらいいですよね。

野田 出番って、きっと本人の得意なところなんですよね。私もヘッドチームのメンバーと1on1をしていて、各事業部の状況を聞いていると、彼らを支えている部下の話もたくさん出てくる。出番を待っているメンバーがまだまだたくさんいると感じます。

田久保 適材適所というか、メンバーそれぞれの強みを見出して、そこを強化するラーニングを提供してあげるなど、得意なことを発揮できる機会を会社がたくさんつくってあげられるといいですよね。自分の強みがわかれば、その能力を高めるために何を学べばいいのか、強みを生かして付加価値を発揮できないかなど、自発的に学び始める。そうなると「ここは自分が頑張らなきゃ」と当事者意識が湧いてくる。

野田 本当にそう。今は基礎として社内でドラッカー研修をメンバー全員を対象に実施していますが、一方でそれぞれの強みを生かすスキル、知識といった局所的な学びを会社として提供するのは難しい現状があります。だから「これを学びたい」「やりたい」と思ったことは、メンバー自ら取りに行くようになるのが望ましいですよね。

田久保 こうした学びへの意欲とスキルって、OSとアプリみたいな関係だと思います。「学びたい、成長したい」といったマインドはOS。プログラミングやデザイン、経理など具体的なスキルはアプリ。採用の段階で、OSがしっかりしている人を採用したり、会社できちんと育てたりすれば、あとはどのアプリをインストールするかだけ。OSがないのに「〇〇の資格を取れ」とか言うから、仕方なく勉強することになる。学びは自分の成長につながるといったことを、社員が実感できる環境を創ることが、これからの経営者に必要なことではないでしょうか。

野田 私が田久保さんに気付かされたことで、最も大きかったのが「仲間への愛」でした。私たちの組織文化である『3つの愛』は、「商品への愛」「お客様への愛」「仲間への愛」を掲げているんですけど、事業開始当時、私は商品とお客様にばかり目が向いて、仲間への愛が薄かった。そこを指摘いただいて、考え方が変わりました。P.G.C.D. JAPANに集まってきてくれた人、支えてくれる人がいるからこそ事業を運営できる。「仲間への愛」をもっと形にしていかなければ、と。そこで、私は1on1やメンバーとの対話、勉強会を始め、組織改革を実施。最近は、私も学び、変わろうとしているのが皆に伝わっているのかなと感じます。

経営者の唯一の仕事は、組織文化を創ること

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田久保 私がつくづく思うのは、評価においては絶対値よりも変化率が重要だということ。絶対値は、例えば前期の査定で10点、後期でも10点の人は変化していないことになる。一方、前期4点の人が後期8点なら倍になっている。こうした変化、変わる能力を見てあげるのが、非常に大切です。なぜなら、今日までに身に付けたスキルは、もう明日には陳腐化しているから。学んだことを吸収し続けるスポンジのような状態をいかにキープできるかが鍵になると思います。個人的には、給与は成果に対して支払われるべきだと思う一方で、変化を大事にするなら、個々の変化率についても評価制度まで落とし込むのがベストですよね。

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野田 今、昇給はその時の成果で見ていますけど、昇格については変化率を重視しています。

ただ、それについて公表していませんし、皆が変化率を意識して行動できる環境ではないので、もっと見える化しなければ、と思っています。

田久保 私も自分の会社にそういう制度を仕組めたらいいなって思いますね。

野田 あと、最近すごく大きな学びがあったんです。きっと捉え方の違いなんですけど、「待つ」ということについての考え方が変わりました。以前は「何もしないこと=待つ」だと思っていて、待つことに対する恐怖があったんです。でも、待っている間に自分は自分のやるべきことをすればいいんだって気付いたんです。今後大事なことに対して、急には行えないことを、組織として小さな成功が増えていくように、面白くて素敵な階段を作っている時間で待っていればいいんだって思いました。

田久保 日本の昔の人はいいこと言っていますよね。「急がば回れ」とかね。

野田 そうですね。最近になって山本五十六が好きになり始めました。「やってみなはれ」って、そんなの自分は無理だなって思っていたんです。でも、「やってみなはれ」って言いながら、その間にその人はその人の重要なことをやればいいんだって。本当に見方や考え方次第なんですよね。

田久保 私は、E・H・シャインの「リーダーの唯一の仕事は文化を創ることである」という言葉が大好きなんです。例えば社員皆が「業績を伸ばそう」「成長しよう」「学び合おう」って心から思うのも文化ですよね。今、野田さんが創ろうとしている「学び」の文化は、組織に浸透しつつあると思います。そんな野田さんの変化を皆が感じられている間は大丈夫だと思う。

野田 私自身、海外事業など別事業の仕事をしていると、組織の変化に気付けなくなる部分も多いと思います。だからこそ、今いるメンバーがリーダーになることが必要。「代表が言っていたから」じゃなくて、「私たちがこうしたい」になっていってくれるといいなと。その間、私は何もせずに待っているのではなくて、今できることをやりながら待っていたい。そして組織が育ったら、一気にそこから加速できるはずだと思っています。

経営者は常にわくわくしている

田久保 田坂さん(グロービス顧問の田坂広志氏)と「マネジメントとは何か」という話になった時、「葛藤との戦い」「自己嫌悪の連続」という言い方をされたんです。トップとしてビジョンを立てたり、戦略を立てたり、何とかするというのはあるけれど、経営課題の9割って結局人の問題なんですよね。

野田 確かにそうですね。

田久保 でも、自己嫌悪との戦いがマネジメントの真髄で、自己嫌悪を重ねるから人間的に成長するんですよね。それが嫌ならマネジメントはできないと思います。だから、大きなことをチャレンジしようとすればするほど、おそらくこれから先も自己嫌悪との戦いの日々になると思います。野田さんが色々なことを健全に悩んでいるのは宿命ですね。

野田 考えることを諦めない。その連続ですね。

田久保 そういう中で野田さんの楽しい時ってどんな時ですか。

野田 いつも楽しいです。楽しくない時がないです。失敗したとか、辛いからといって楽しくないわけではないんです。楽しくても辛いんです。でも、それが自分の使命、自分の志だと思ってます。

田久保 普通の楽しいとは別の感覚なのかもしれませんね。『イチローインタビュー』っていう本に、高校時代までは野球が楽しかったって書いてあって、要するにファンの状態なんですよね。だけど、たくさんのものを背負ったら、以前の感覚では野球はできない。でも、修行のようなことをしているからこそ、達成した時の精神的満足感みたいなものが生まれてくるんでしょうね。

起業も同じで、学生起業の場合、卒業と同時に起業というのはファンの感覚で行えるけど、従業員、家族の人生って様々なことを背負いこんだ時には、ファンとは別の感覚で楽しめなければ続けられませんしね。

野田 楽しむ質が変わっている部分はありますよね。

田久保 そういうことだと思います。例えば、「わくわくする」って言葉はみんな好きだと思うんです。一般的なわくわくって、USJに行きます、ディズニーランドに行きますっていうものとセットになる言葉な気がしますが、経営者のわくわくがその感覚だと企業再生なんて行う人はいないと思います。

野田 確かにそうですよね。負債をどうすればいいのかみたいな話ですもんね。

田久保 ええ。でも、野田さんもそうだと思うんですけど、経営者やトップのわくわく感や楽しいってアドレナリンが噴き出る状態なんだと思うんです。きっと再生フェーズの会社を見て、アドレナリンが出る人はいらっしゃると思いますし、ゼロベースからイチをつくる時にアドレナリンが出る人もいらっしゃると思います。でも、その感覚ってUSJやディズニーランド的なわくわくではないんですよね。そういう意味では、経営者や事業家などのトップは常にアドレナリンが出ていると思います。

野田 そうですね。そういう意味では、経営者は常にわくわくしていますね。緊張感や大変な状態の時でも、楽しくないわけではないんですよ。何のために行うのかという源泉やベースがある中で、苦労すること、努力すること、頭を悩ませることがあるし、そこでできない自分がいることは別に辛いことではないと思います。その状態も楽しむことが重要なんです。その状況の中で自分の役割があって、自分で何かを見いだすことで、誰かが楽しい顔になったり、成果が生まれたりするわけですからね。

だからこそ、JBIGでは人が育つ土壌を作り、コンディションを整えているフェーズの今、皆がわくわくできるようなことや、小さくとも成功体験を味わえる機会を創出していきたいと考えています。そんな中で、私は組織と人の成長を楽しみながら「積極的に」待ちたいと思います。

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JBIG代表・野田のアカウントです。スキンケアメーカーの経営者として、「美しくなる習慣を創造する」デザインアントレプレナーとして、自身の考えや気づきを発信しています。noteマガジン『野田ラボ』など週1回のペースで更新。剣道とスキーとダイビングは人生をかけた好きなこと。