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歯の本数と認知症の発生率は関係あり【日常的によく噛み、歯と歯茎を健康に保つ】

医療法人社団 千寿会 理事長 本間 輝章×P.G.C.D.代表 野田 泰平[パート2]

医療法人社団千寿会理事長 本間輝章先生をお迎えして、前回のパート1は、歯並びや噛む習慣の話を伺いました。今回は、歯の本数と認知症の関係や、噛み合わせと平衡感覚の関係など、歯によるさまざまな影響をお話しいただきました。

■対談参加者プロフィール
医療法人社団 千寿会 理事長
本間 輝章
医療法人社団 本間歯科 新松戸総合歯科診療所副院長
国際口腔インプラント学会ICOI日本大使
元米国ニューヨーク大学ペリオ・インプラント科臨床指導医


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株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン 代表取締役CEO
野田 泰平
1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

子どもに「よく噛む」生活をしてもらうために

野田泰平(以下、野田)
前回は噛み合わせのお話を伺いましたね。収録の前に、「親と子の噛み合わせは似る」と伺いました。親があまり噛まないで食事をしていると、子どもも噛まないのでしょうね。

本間輝章(以下、本間)
そうですね。特に食事の内容で決まる部分もあります。食事が購入品ばかりなら柔らかいものが多くなり、噛まない傾向になるでしょう。安い肉を買って調理するなど硬いものの多い家庭なら、より噛むようになりますよね。最近は硬いものを食べない子供が多いですが、顎が疲れてもきちんと噛んで飲み込むまで指導してもらいたいですね。

野田
噛む行為が将来につながるという事実を知らないのでしょう。歳をとっても最期まで美味しいものを食べたいですよね。やはり、そこでも噛み合わせが大切なのでしょうか。

本間
残っている歯の本数と「長生き」は確実に相関関係があります。以前、厚生労働省が提唱する「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動(※)」の話をしました。その20本を達成している方は、認知症のリスクが低いんです。

自分の歯が20本以上残っている方と、残っているのが数本で入れ歯も入れずにそのままにしている方とでは、認知症の発生リスクは1.9倍にもなります。

野田
ほぼ2倍じゃないですか。

本間
しっかりと噛む行為によって筋肉が動き、血流がよくなります。また、歯根膜などの感覚が脳に信号として伝わります。そのため、脳の様々な部分が活性化されるのです。

また、噛み合わせが悪くなると、アルツハイマー病の原因となる物質が頭の中に蓄積される、という研究結果も出ています。

※「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動」
「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動のこと。

歯のある・なしで日常の楽しみも変わる

本間
残っている歯の本数は、日常の行動にも影響します。80歳で自分の歯が20本以上ある方とそうでない方に「今の楽しみは何ですか?」と聞いた調査があります。20本以上を達成している方は、旅行やスポーツ・散歩、友人との時間などを多く挙げています。

野田
グラフを見ると、そうでない方と全然違いますね!

本間
達成していない方は、テレビや家族だんらんなどが中心で、内向的です。私の患者さんもそうですが、入れ歯の方は、あまり出かけたくない。外出先で入れ歯を外して洗ったり、泊まりの旅行で入れ歯が知られてしまうことを考えると「行きたくない」と思う傾向にあります。一緒にいる人に「この料理は食べられない」と言うのも気が引けるようです。

歯がありしっかり噛めている方なら、何でも食べられ、楽しめます。そのために外向きになれる。「歯があると長生きできる」は、データとして結果が出ています。

噛み合わせは平衡感覚にも影響する

本間
奥歯がなくて噛み合わせがうまくいかない方のうち、54パーセントが年に2回以上転倒します。「最近よくつまづく」という方は、奥歯が影響していることも多いです。

トップアスリートの方はやはり噛み合わせがきちっとしています。噛む筋肉のバランスが取れていると、体のバランスが保たれるのでしょう。

マウスピースをすると歯がすべて均等に噛めるので、噛んだ状態でベンチプレスをすると、10%から15%くらい重くても上げられます。

野田
噛み合わせで、力の入り方や平衡感覚が変わるんですね。

本間
そうなんです。噛み合わせと認知機能の関係を示したネズミの実験を紹介しますね。

本間
「モリスの水迷路」という実験です。ネズミは水が嫌いですが、水槽を泳がせて、浮島から外に出る方法を教えます。目印を付けて何度もやらせると、浮島のある目印を覚えるのです。何度もやると、浮島に到達するスピードが速くなっていきます。

ところが、ちょっとかわいそうなのですが、奥歯を削って噛み合わせが悪い状態にすると、学習の速度が遅くなる。噛み合わせを元に戻してあげると、また、本来の学習スピードに戻ります。

噛み合わせが悪くなると、脳の中で認知をつかさどる海馬と呼ばれる部分の反応が減ってしまうんですね。

野田
年齢を重ねるのを待たずしても、若くして噛み合わせがうまくいっていないと、学習に影響がありそうですね。

噛み合わせにはストレスとの関係も

本間
噛むと交感神経や副交感神経が作動するので、ストレスのレベルも変わります。昔、宇宙飛行士の方がチューブで飲むだけの食事をしていたら、ストレスで調子が悪くなってしまった。だから最近では、宇宙食でもフリーズドライなどの噛めるものにして、それでストレスを抑えているそうです。

野田
昔よく見ましたが、犬に硬いガムを噛ませたりしますよね。僕はその人間版を作るといいんじゃないか、ってずっと思っているんです。

本間
飴や氷を噛む方っていますよね。あれは気が付かないうちに安心感を得ているんです。他に、ガムを噛んで仕事をすると脳が活性化して、頭がクリアになったりもします。

野田
噛むことでストレスが減ったりパフォーマンスが上がったり、噛み合わせをよくすると筋トレのパワーが上がったり……。歯を大事にするといいこと尽くしですね。

いい歯並びになるにはどうするか?

野田
子どもをよい噛み合わせ、歯並びにするには、具体的にどうすればよいのでしょうか?

本間
やはり、よく噛むものを食べさせてあげてください。ナッツや野菜スティックなどがいいですね。フルーツも、噛まずに食べられるものはたくさんありますが、リンゴのように噛まないと飲み込めないものを取り入れるといい。

ある程度の顎に成長すれば、遺伝子に組み込まれた歯のサイズになってくれるので、きれいに生えそろうはず。「よく噛むおやつは、一番安い矯正治療だ」と、よく言っています。アイスやヨーグルトのようなものではなく、よく噛むものを当たり前のように出していれば、将来歯科治療が必要なくナチュラルできれいになる場合が多い。

いい噛み合わせになるとスポーツパフォーマンスもよく、よく寝る子にもなります。また、噛み合わせがよくないと成長が遅れるので、噛み合わせがいいと成長にもいい、と言えます。

野田
改めて確認ですが、噛む行為がそれだけ体に影響するのは、歯と歯茎の間に歯根膜があり、そこから情報が脳に伝達されていくから、という認識でよいのでしょうか。

本間
健康な歯であれば健康な歯根膜があるので、脳に情報が伝わります。ただ、歯根膜のない入れ歯でも、しっかりと噛めていれば認知症になる率は低く抑えられるんです。

野田
お口の健康は、将来の健康につながっているんですね。シミやシワ、白髪を心配する方は多いですが、それらは認知症や寿命、体の健康には関係がない。噛むという行為や、歯の健康のほうが、健康にはよほど重要です。

本間
70代になっても毎日テニスするような方は、たいてい歯がしっかりしていて、「歯が若いな」と思いますよ。

野田
歯を見て「若いですね」って言われてみたいです! 今回もありがとうございました。

執筆:栃尾 江美

対談の続き(パート3)はこちら▼

対談のパート1はこちら▼

本間氏との過去の対談はこちら▼

【第1回対談】

【第2回対談】

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