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【コレクターが語る!】起業家とアーティストの共通点とは?

【ART PROJECT with P.G.C.D.特別企画】
古賀 徹×P.G.C.D.代表 野田 泰平[パート2]

アートを通して自分の美的価値観を発見し、新しい自分に出会う『ART PROJECT with P.G.C.D.』。
2023年5月1日より、JBIG meets Art galleryではP.G.C.D.代表 野田泰平が所有するアート作品を展示したコレクション展を開催中。
展示作品をバックに行われた起業家でありアートコレクターでもある古賀徹氏と野田による対談の続きをお届けします。
前回のパート1では、古賀氏がコレクターになった経緯や、「インテリアアート」と「現代アート」の違いなどをお聞きしました。
今回は「起業家とアーティスト」という視点からお話を伺っていきます。

【対談者プロフィール】
古賀 徹
2008年に株式会社MEJを設立しヘルスケアD2C事業で会員数55万人まで成長。2019年にM&Aを実施しユーグレナグループ入りを果たす。退任後は投資家として活動を続け、2020年より現代アートのコレクションを開始。

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株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン 代表取締役CEO
野田 泰平
1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

起業家とアーティストの共通点



野田 泰平(以下、野田)
前回に引き続き、起業家でもありアートコレクターでもある古賀さんに来ていただいてお話を伺っていきます。
パート1の最後のところで話が出ましたが、僕は、起業家とアーティストって親和性があると思っています。
この対談の撮影前にも話していたのですが、アーティストさん達って、世の中に新しいものをゼロイチで生み出そうとしているようなパッションであったり、ある意味狂気に満ちたものであるとか、プレッシャーであるとか、起業家の人たちと通じるところがたくさんあるなと思っているんです。
古賀さんからすると、アーティストと起業家で似ている部分ってどう考えますか?
古賀 徹(以下、古賀)
僕は現代アートと出会ってからまだ3年程しか経っていませんが、ものすごくのめり込めた理由としては、「無から有を創造しているところ」が結構共通しているからだと思います。
もちろん、起業家として会社をやる中で、例えば代理店やフランチャイズなど、同じものを展開する場合もありますが、我々はメーカーをやっていたので、何かブランドを作ったりプロダクトを作ったりというのは、何も無いところから価値を創造しているんです。
それが、アーティストさんがやっていることとすごく近くて、話も合いますし、話を聞くと共感しますし、本当になんか生き方が近いものがあるなと感じます。
野田
パート1でも話していましたが、一つのアート作品だけど、その情報量がその絵に収まりきらないぐらいに、想いであったり、歴史的な文脈もあって、この絵がどうなのかを含めて、すごく考えられて作られていますよね。
もちろん「文脈とかじゃないんだ」っていう方もいらっしゃるけど、その言っていない分、逆にものすごい熱量で、その一枚に向き合っていたりとか。
僕は今、起業家になりたい人たちの支援をEOを通じてやっていたりするんですけど、なりたいと思っている人と、踏み出した人と、またそこから突き抜けようとしてる人たちで、レイヤーというか、こだわりや思いの深さや会話のレベルも全然違うんです。
起業家でも感じているんですけど、やっぱりアーティストさんでもそこはすごく感じるところがあるなと思っていて。
古賀さんも、アーティストとの会話の中での熱量の違いとか、アートを選ぶ中でのアーティストの熱量などのテーマで感じていることはありますか。
古賀
印象的な出来事があります。世界的なギャラリーに所属されているアーティストの方とご一緒した時に、若手のアーティストが来ていて話をしたんです。
その時に自分の絵のフィードバックとか、どうやったら成功できるかの話をするじゃないですか。僕はその場にコレクターとしていたんですけど、その時に言っていたのが「お前らはまだ社会と折り合いをつけていないんだ」とはっきり仰っていました。「画家としてフィールドに立ってない」ということを仰ったんですね。
これは師弟関係が密な中だから出てきた言葉で、それがすごく印象的で。いわゆる誰かに評価されたいとか、売れたいと言うので描いている人たちに対して言った言葉だと思うんですけど、本当に自分の中で「社会と折り合いをつける」という言葉をどう表現していいのか難しいんですけど、そんなの関係なく「俺はこの絵を描きたい。自分の表現を追求しているだけなんだ」というところに行けているのかというのも、結構大きい気がしています。それをバーチャルという表現をされてすごく印象的でした。
野田
素敵な話ですね。
僕も、この前このギャラリーで個展を開催してくれた大和美緒さんから聞いたお話で感動したことがあって。大和さんが、自分の指導をしてくれていた名和晃平さんに「アートの力を、作品の力を信じろ」って言われたんですって。作品があなたを違う世界に連れていってくれるから、アートの力を信じて、その作品の力を信じて作品に力を込めて作りさえすれば、そのアートがあなたを、もっと違う所に連れてってくれるよって。
大和さんが「自分が折れそうになったり、迷いそうになったらその言葉に立ち戻るんですよね」と言っていて。 いい言葉だなあって思ったんです。
もちろん、アーティストにも生活があるし、生きていくことを考えると、迎合しそうになったり、売れやすいものはなんだろう、とか考えていったりとすると思うけれど、やっぱり作品の力を信じ、作品が連れてくる世界を信じるってのは、アーティストとして魂の言葉だって思いました。古賀さんの先程のお話の「社会と折り合いをつける」っていうのも、すごいプロの言葉だなって。
古賀
本当に、アーティスト同士でしか話せないことだと思います。

アーティストの卵たちへの問いかけ


野田
昨年末に、アーティストでもあり東京藝術大学の准教授でもある薄久保香さんが、東京藝大の院生や博士課程の方たちを連れてきてくださって、起業家とアーティストとアーティストの卵のシンポジウムをこのギャラリーでやったんです。(記事はこちら

僕は、そこで少し視点を変えた話をさせてもらって。アーティストの卵である学生のみなさんに「あなたたちは、今までお客さんとして大学にお金(学費)払っているでしょう?けれど、これから大学(院)を卒業した瞬間に、お金をもらわなきゃいけないようになる。だけど誰からお金をもらうか分かっていますか?」っていう話をしたんですよ。
というのも、実際の課題だと思っているのは、大学院を卒業した人たちって、アーティストとして活動するために具材(画材)を買わなきゃいけないですよね。そのためにアルバイトして、貯まったお金で具材を買って、アーティストとしての作家活動をする。「アルバイトの時間と作家活動している時間、どっちが長いですか」って聞くと「アルバイトの時間です」って答えがかえってきて、「じゃあ作品は売れた?」って聞くと「いや、まだ売れてません」って。
厳しい言い方かもしれないですが、それだとフリーターと何が違うのかなって。それで結局売れない絵がずっと溜まっていって、何年も時が過ぎて、やっぱり他の道を進もうとなっても、選択肢が芸大進学希望者向けの予備校講師くらいだったりするなど、アーティストってつぶしが効きにくいとも聞きます。
なので、僕がそのとき話したのは、起業家もそうなんですよ。
自分のサービスを作ったときに、どんなに良いサービスだと自分が思ったとしても、そのサービスを買ってもらえなければ誰からもお金が貰えない。それでは売上もないし、イコールそれは社会にも存在していないんですよ。お客様がいない限り、社会に存在している証がないというふうに。
ただ、アート作品を10万人の人に買ってもらう必要はないじゃないですか。そうなれば年間何人に買ってもらいたいですか。多分、数人〜数十人ですよね。
なので、そんな自分の作品にビビッとしてくれる人って、どういう思考で、どういう形が自分の作品に対してそういう思いを持ってくれるのか。そこを知った中で自分の作品を追求探求する。誰に売れるかじゃないけれど、少ないかもしれないけど、その人たちには抜群に共感される、応援してもらえるようなアートというものを自分の中で作る。そこに本気で取り組めるか?っていう考え方ってすごい大事なんじゃないねっていう。
僕たちのビジネスでいうと、僕は事業で「1%戦略」って言っていて。化粧品マーケットはおよそ2兆6千億円とか言わる中で、シェア1%でも260億円を取れるじゃないですか。だから99%の人からそっぽ向かれても、1%の人に好かれるような、その1%を目指すプロダクトであり、サービスであり、思いの塊のようなものが作れたらいいんだって、事業のテーマで思ったりしています。
野田
僕は、アーティストさんの「売る」っていう部分であったり、そこを支えるアートマーケットのヒエラルキーというか、ピラミッドとか、そういうところにもっとビジネスの視点がないと、そこが広がらないじゃないかなと思いますが、古賀さんはどう考えますか?
古賀
同じ文脈で捉えると、絵を売るということ自体は、そんなに難しくない。
マーケットで、トレードであり、コレクターの方だったり、いろんな視点を持ってマーケティングしていけば、そんなに難しくないと思います。
その上で大事なのは、やっぱり残っていく作品やアーティストになれるか、もっというと、死後、世界でも価値があるような作品になるかっていうのを考えた時には、やっぱり売れるかどうかより、もっと大事なことがあるんだろうなという風に捉えています。
もちろん、現代アートとしてプロになっていく中で食えない時期もあると思うんですけれど、この売れるかどうかっていうところ以外で、もっと本質で深い部分に向き合い切った人しか結局残れない、すごく厳しい世界なんだろうな、と思います。
アーティストのゲルハルト・リヒターをモデルにした映画で、すごく印象的なシーンがあるんです。
東ドイツの退廃主義っていうんですかね。いわゆるトラディショナルな芸術しか認められず、それ以外の人は逮捕されたり捕虜になったり、作品を捨てられたりという、すごい厳しい時代に、リヒターは東ドイツから西ドイツに行って、戦争の中で自由を求めに行った。
その中で、リヒターが大学でいろんな人の作品を真似して、初めていわゆる現代アート風の作品を大量に作っていくシーンがありました。
それを先生に見せたら、「これはお前の絵じゃないって」一喝されて、自分が作った作品を全部燃やすシーンがあるんですね。もちろんフィクションも含まれていると思うんですが、そのシーンがすごく印象で。
本当に自分の絵を描けているかっていうのは、その中でもすごく追求されていて、それが結果として、やっぱり自分にしか描けないと評価されて、美術史に載っていくようなってきたりとか、本当に複雑に絡みあっているんです。ざっくりしているんですけれども、そんな感じの印象ですね。

現代アートを育む社会づくり


野田
アーティストさん達って、そういう環境であったり、そういう中で生きていて、アートと向き合っているじゃないですか。社会がそこをもっと応援するような場でもあってほしいというふうに思っていて。
今、企業が応援するような形で社会がどんどん動いていたり、国自体も、アントレプレナー(ゼロから会社や事業を創り出す起業家)をどんどん生み出そうと、スタートアップ支援や投資をしたりしています。
これからの未来の戦略として、新しい事業を生み出す若者を作ろうよってやっていることと同様に、日本の社会がこういう現代アートを取り組んでいる子たちを応援するような文脈ってすごく大事だなと思っていて。
日本のアートが世界になかなか発信しづらい一つの問題として、言語があります。英語で作品の説明がされているものは、英語の文脈の中で、世界の中に繋がっていきやすいけど、日本語だけで発信されている作品は、結局日本語で止まってしまうという言語の問題。どれだけSNSが広がったとしても、やっぱり言語によって見る人たちの数が圧倒的に変わってしまうという。
あとは、ハングリー精神も大事だけど、例えば生活いかなければならないところに対して、そこの業界にチャレンジして、ある程度の人たちがちゃんと生きていける形にならなきゃいけないなと思っています。
話は変わりますが、野球の福岡ソフトバンクホークスってすごいなと思っていて。野球チームとして、日本で初めて4軍を作ったんですよ。
スポーツ選手の若年化が進んでいくと、もう30代で引退とかあるじゃないですか。1軍に行けずに2軍3軍で終わって人たちもいる。でもその後のキャリアってどうしたらいいのかわからないので、ガードマンや警備員になったりするみたいで。
ソフトバンクは4軍まで持って、野球選手のヒエラルキーを大きくしていって、そこで引退した人たちを自分の会社でちゃんと採用するようなエコシステムを作ったりしているんですよね。だから生え抜きの人が集まって回るので、活躍して成長して生まれてくるんだろうなあっていうふうに思っているんです。
そういう社会システムを含めて、やっぱりこの現代アートをと取り組んでいる人たちが応援される、もっと言うと頑張れる、才能はちゃんと開花される、評価される仕組みが生まれるともっといいなって。起業家支援をしているからこそ、僕はたまたまそういうのに触れ合うことが多いからこそ思う部分もあって。なので、少なからず微力ですが、このギャラリーのような場を持っていたりするんですよね。
そういう文脈で、アーティスト支援じゃないですけど、古賀さんが思っていることはありますか。
古賀
はい。我々も起業家なので、やっぱり何かを生み出していくとか、これから未来を担っていくような人を応援したいなという気持ちも同じくあります。
起業家としては、日本は、国が支援してくれたりとか、そういう団体がたくさんある方かなと思っているんですけど。経済としては、日本はGDP世界3位で十分成功していると思うんですが、その中でアートとしてのマーケットが、およそ2000億円台とすごく少ないんです。海外のアートフェアに行くと、日本人がすごく少ない。
僕は最近の投資家しか知らないので「最近どうですか?」って聞くと「日本人増えたよ」って言われるんですが、実際にはまだまだ少なくて。
見た感じでは数%しかいないです。でも、世界第3位の経済大国がアートマーケットではで数%しかいないって変な話なんですよね。
おかしいなと思ってちょっと勉強したら、いわゆる富裕層が資産として持つ中に金融商品、不動産とかの種別の中に、だいたい世界平均で5%ほどアートがあります。
アメリカやヨーロッパは平均割合よりも高いです。けれども日本は、データ上は資産500兆円くらいを富裕層が持っていても、国内でアートが売れるのは年間で2000億円。全部のアートを足しても数兆円だとしても、おそらく1%はいってないじゃないと思った時に、やはり、その金融の仕組みが成り立たないというところがすごく大きいなと思います。
現代アートとして売れるかもしれないというのは、アーティストとしては関係ないんですけども、やっぱり買うコレクターの土壌が全然育っていない。人数も金額もそうなんですが、買った時の税制の優遇ですとか、そういったものがある国の方がはるかに成長していて、そういった仕組みがあるかないかっていうのはものすごく大きいと思いますね。
野田
なるほど。ありがとうございます。
パート2はアーティストと経営者という視点や、アートのマーケットの話をさせていただきました。日本のアーティストたちっていうのは、僕はすごい才能のある人たちが多いと思っているし、本当の意味で向き合って挑戦している人が多いんだけど、芽が出やすい環境かと言うと、世界的に比べると特別良い環境ではないと思っていて、僕達も含めて、日本としてアートはどう考えたらいいのかっていうのをお伺いしました。
パート3はまた別のテーマでお話させていただきます。
パート3は準備中▼
対談のパート1はこちら▼


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